『ヨガとストレッチの違い』

ヨガをやったことのない人や、まだ始めたばかりの人には、ヨガとストレッチが同じものに見えるかもしれません。
実際、私も初めてヨガの本を見ながら自宅でやってみた時は、ただのストレッチとしか思っていませんでした。
でも、ヨガとストレッチは違います。
その違いは何だと思いますか?
今日は「ヨガとストレッチの違い」について書いてみたいと思います。
■言葉の意味
英語のstretchの意味はいくつか出てきますが、ここでは体操としてのストレッチの意味を辞書で引いてみます。
ストレッチ体操
腱(けん)・筋肉・関節を伸ばす体操。肉ばなれなどの傷害を防ぐ準備運動や,腰痛・肩こりなどの防止に適する。
(weblio辞書より)
"yoga"とはサンスクリット語のyuj(馬と馬車をつなぐくびき)から派生した言葉で、「つながり」という意味です。
馬車につないだ馬が暴れないようコントロールするように、心身をコントロールするということです。
■目的
ストレッチの目的は、上に挙げた意味にもあるように、体を伸ばして柔軟性を高めるということにあります。
ヨガも、一般的に「いろいろなアーサナ(ポーズ)をやることで筋肉や関節を動かし、柔軟性が高まる」というイメージがあると思います。
確かに、その効果は大きいです。
しかし、柔軟性を高めること自体が目的ではありません。
ヨガ・スートラというヨガを体系的に説いた根本経典がありますが、こんな2節から始まります。
これよりヨーガを明細に説く。
ATHA YOGANUSASANAM.
心の作用を止滅することが、ヨーガである。
YOGAS CHITTA VRITTI NIRODHAHA.
「心の動きを滅すること」がヨガの定義です。
いつも心が凪いだ海のように穏やかでいられればいいのですが、そうもいきません。
生きていれば、楽しいことや嬉しいことばかりではなく、嫌なことや苦しいことも経験します。
そういう時は、苦しくなったり怒りが湧いてきたりと、心が大きく波立ちます。
ヨガを通して、その波立ち(=心の作用)をなくし、どんな時でも心穏やかに生きられるようになるというのです。
それは一見、「苦しみを我慢する」「ネガティブな感情を見ないふりをする」と捉えられるかもしれませんが、
そうではなく、ネガティブな感情が湧いてきた時でも客観的に自分を観察し、その苦しみに飲まれなくなっていくということです。
私自身がヨガを始めて一番変わったと感じているのは、この「自分を客観的に見られるようになった」ことです。
そして、最終的なゴールは「サマーディ(三昧)」と言います。
三昧とは、全ての不安や苦しみから解放された至福の状態です。
つまり、ヨガの目的は「幸せに生きること」です。
比較するとわかるように、ストレッチは「運動的な効果」のみにフォーカスしていますが、ヨガは「運動的な効果」だけではなく、「精神的な効果」もとても大きいです。
私たちは、肉体だけでできているわけではなく、心(精神)も持ち合わせています。
「心身一如」という言葉があるように、肉体と精神は切り離せるものではなく、つなぐものでもなく、すでにつながっています。
ヨガは身体だけを鍛えたり伸ばしたり整えたりするものではなく、心と身体全体を整え、自由に幸せに生きることを目指します。
ヨガとストレッチは、表面的には似たものに見えるかもしれません。
しかし、その目指すところは大きく違います。
もちろん、どちらが良い悪いではなくて、ストレッチが好きな人はストレッチを続ければいいし、
精神的効果より身体的効果を重視してヨガをやっても良いです。
何を目的にするか、何を選ぶかはそれぞれの自由です。
でも、ヨガはただのストレッチやエクササイズではなく、
心身ともに健康に、自由に幸せに生きていくためのものだということをぜひ知っていてほしいと思います。
(May 12, 2018)