美味しい緑茶の秘密

ヨガの根本経典『ヨガ・スートラ』に、「アビヤーサ」という言葉があります。日本語では「修習」と訳され、何かを成し遂げるためには、長い間・休むことなく・真剣に続けることが大切である、という教えです。

 

私達は、日常生活や仕事などで「速くて、無駄のない、良いもの」を求めたり求められたりする場面が多いと思います。もちろん、それも大切なことであり、スピード化と効率化が進んだことで成り立っていることもたくさんあります。

しかし、果たして本当に「良いもの」「人を幸せにするもの」は一朝一夕でできあがるのでしょうか?遠くのゴールに向かって、目の前の取り組むべきことをコツコツと時間をかけてやり続けていくことも、時には必要なのではないでしょうか?

「継続は力なり」という言葉があるように、たとえゴールが見えなくて途中で投げ出したくなることがあったとしても、一つのことに取り組み続ける事は、きっといつか実を結び、花を咲かせるはずです。

 

先日のゴールデンウィークは、祖母と両親の住む静岡県浜松市天竜の実家で過ごしました。

静岡と言えば緑茶の産地で、実家の畑の一角にも長さ7~8mのお茶の木の畝が10列ほど並んでいます。毎年、ゴールデンウィークのあたりでお茶摘みが行われ、今年は私の滞在中に摘むことになったので、手伝うことにしました。

私がお茶摘みを最後に手伝ったのは小学生の頃で、もう20年くらい前になります。当時は、珍しい体験に楽しさも感じましたが、淡々とお茶の葉を摘む作業が段々と退屈になり、途中でやめてしまったような記憶があります。しかし、大人になった今、きっとあの頃とは違ってたくさんお茶を摘み、最後まで楽しみながらしっかり手伝うことができるだろうと思いました。

 

お茶の木は、古い葉で作られた膝ほどの高さの土台の上に、若い黄緑色の葉が生えます。そして、その若い葉のついた茎を一つ一つ手で摘んでいきます。

当日の午前中、腰に籠を下げ、麦わら帽子をかぶり、軍手をはめて、私は「できるだけ速く、たくさんお茶を摘もう!」とやる気満々で摘み始めました。しかし、少し摘んでみた時、ふと気付いたのです。「お茶を摘むって、難しい」

茎が長く出ていれば摘みやすいのですが、短くて埋もれているものはなかなかすぐに掴むことができず、残ってしまいます。そして、速く摘もうとすると、茎の途中で摘み取ってしまい、こちらも残ってしまうのです。さらに、しばらく屈んだ姿勢でいると腰が疲れてきて、しゃがんだ姿勢になると膝が疲れてくるため、途中で何度も体勢を変えたりして、なかなか進むことができません。人生でお茶摘みの経験がほとんどない私にとって、「できるだけ速く、たくさん摘む」なんてことは、そんなに簡単にできることではありませんでした。

 

お茶摘みは、88歳になる大ベテランの祖母も一緒にやりました。私は途中何度も祖母の様子を観察していたのですが、摘み終わったお茶の木を見ると、私のものとは大違いでした。茎の長い葉も短い葉も摘み残しがなく、私の3倍くらいの速さで黄緑色の葉が祖母の手の中に消えていきました。

その後姿を見ていた時、私の頭の中に「長い間・休むことなく・真剣に」という言葉が浮かび、「結果ばかりを見て、丁寧に時間をかけるという気持ちを忘れていたな」ということに気づきました。そして、祖母のようにはいきませんが、残りの葉を一つ一つできるだけ丁寧に摘んでいき、一日かけて一列分の葉を摘みました。

 

祖母の緑茶は、とてもいい香りで、味も濃く、飲むとほっとします。この美味しさは、祖母が長い間黙々とお茶を摘み続けてきた結晶です。

日常ではどうしても早く結果が欲しいと焦ってしまうことも多いですが、このお茶摘みを通して、一つのことをやり続ける事の大切さを改めて学びました。

これから先、「なかなかうまくいかない。先が見えないからここでやめてしまいたい」と思うことがあった時は、このお茶を飲みながらあの祖母の後姿を思い出し、継続することの大切さを忘れないようにしていきます。

 

皆さんは、何か達成したい目標はあるでしょうか?もし、なかなか結果が見えなくて諦めたくなったとしても、自分を信じて、コツコツと、目の前のことに取り組み続けてみてください。すぐに芽が出なくても、土の下で根を広げ続けていけば、いつかきっと大きな花を咲かせることができるでしょう。

 

※この記事は、リラヨガインスティテュートHPの「今月の小話」にも掲載されています。

http://www.lilayoga.jp/instructor/kotoba5.htm#na12

 

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