風邪が教えてくれたこと

ヨガの根本経典『バガヴァッド・ギーター』に「苦楽を平等に見る」という言葉があります。私たちの過ごしている日常の世界では、楽しい出来事やうれしい出来事もあれば、望まない出来事も起こります。でも、起こることにはすべて意味があり、「ポジティブな出来事=良いこと」「ネガティブな出来事=悪いこと」と区別するのではなく、どちらも必要なメッセージなのだと受け入れていきなさいという教えです。

 

例えば、空が晴れると気持ちも前向きになりますね。外へ出て楽しい時間を過ごせたり、空を見上げて明るい気持ちになれたりすると思いますが、雨が降ると予定がキャンセルになったり、空を見ても雲に覆われていて気持ちが沈みがちになったりします。しかし、晴れの日ばかりが続いていても私たちの生活に不都合が出てきますし、水不足にならないためには雨が必要にもなります。雨が降ること自体が悪いのではなく、晴れることも雨が降ることも、平等に必要なことなのです。

 

私は、昨年12月29日から風邪気味でした。2013年のお正月にも風邪をひいて寝込んだのですが、それ以降は健康に過ごせていたので、このままいけば元気に新しい年を迎えられると思っていた矢先のことでした。

 

最初は喉の痛みから始まり、元日から咳が出るようになりました。幸い高熱が出なかったので普通に生活はできていたのですが、夜中の咳が増えていきました。私は、平日は会社勤めをしています。仕事始めは1月6日でしたが、その日の夜から症状はますますひどくなりました。身体を横たえると咳が出るので起き上がって治まるまで待ち、落ち着いたら横になるがまた咳が出て起きる、ということを一晩中、何度も繰り返しました。そのため、朝方まで満足に眠ることもできず、体力も消耗してしまい、日中の仕事や生活がままならない日々が続きました。病院で診てもらい薬も出たのですが、なかなか効きません。少し量を増やしてもらってもあまり変化がなく、「この日々がずっと続いたらどうしよう」と、とても不安でした。

また、深く息を吸うと咳込むため、寝ているときはもちろん、起きている間もなるべく咳が出ないように浅い呼吸しかできません。疲労感だけが残りました。食べ物の味も美味しく感じられません。食事が、食べることを楽しむというのではなく、「体調を回復するために食べる」という義務的なことだけになっていたからです。

 

それから数日が過ぎ、咳が出始めてから10日ほど経ったころから少しずつ眠れるようになってきました。最初に睡眠中の咳が減って夜中にあまり起きずに朝を迎えたときは、「眠れるって、こんなに幸せなことなんだ…」という思いを噛みしめました。眠れるようになったことで気力と体力を取り戻し、日中も少しずつ普段の生活に戻れるようになりました。

 

呼吸することも、食べ物を味わうことも不自由なくできるようになり、「睡眠」「呼吸」「味わうこと」という普段は当たり前のように繰り返している行為のありがたさに気づきました。

 

風邪をひいていた2週間は、本当に苦しい日々でした。しかしこの経験があったおかげで、身体が留まることなく機能してエネルギーに満ちた毎日を送れている幸せを、あらためて感じることができました。忙しい日々を送っていると、つい睡眠や食事を疎かにしてしまったり、気持ちが急いてゆっくり呼吸することを忘れてしまったりすることがあります。そんなときこそこの日々を思い出して、自分の身体に意識を向けて大切にしていこうと思いました。

 

目の前の世界には、望まないことや辛いと感じることが差し出されるときもあります。しかし、その苦しみを最初から「ネガティブなもの」として拒否するのではなく、「何かのメッセージなのかもしれない」と思って、受け入れてみましょう。それは一つの過程にすぎず、その先には光に満ちた世界が待っているのかもしれません。

 

※この記事は、リラヨガインスティテュートHPの「今月の小話」にも掲載されています。

http://www.lilayoga.jp/instructor/kobanashi201401.htm#na12

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