福祉施設でのボランティア

ヨガの根本経典『ヨガ・スートラ』に「Santosha(サントーシャ)」という言葉があります。日本語では「知足」や「足るを知る」と訳されます。自分にないものではなく、あるものに目を向けていきなさいという教えです。

 

「隣の芝生は青く見える」ということわざがありますが、他人の持っているものは何でもよく見えるものです。自分に足りないものを数えて「もっとお金がほしい」「もっと時間がほしい」「もっと幸せになりたい」と思うことがあるでしょう。しかし、本当は今あるがままの状態で十分に足りているのであって、人と比べる必要はありません。毎日を元気に過ごすことのできる健康な身体や周りで支えてくれる人たちなど、今持っているものに目を向けると、それらの存在こそが本当の幸せであると気づくはずです。

 

横浜市緑区にある知的障害者支援施設では、毎月1回土曜日にヨガ教室が開催されています。私は偶然にも施設のホームページでヨガ教室のボランティアスタッフ募集の記事を見つけたので、今年の2月と3月に参加してきました。

 

ヨガの先生は障害者を対象にしたヨガも教えている方で、参加しているのは身体を動かすことのできる自閉症やダウン症の障害を持った大人の利用者の方々でした。一人では外出できないため、親御さんが付き添って来室する方もいました。ボランティアスタッフは、参加者の皆さんと一緒にマットを敷いて身体を動かすときにサポートしたり、休憩時にお茶を用意したり、会場の準備や後片付けを受け持ったりしました。

 

私は以前から、ヨガを通して医療や福祉に携わることに関心があったため、どのような内容のレッスンなのか興味を抱いていました。しかし、実際の内容は特別なものではありませんでした。私たちが普段の練習で行うような呼吸法やアーサナです。参加者の皆さんは自分のできる範囲で身体を動かし、生き生きした表情でとても楽しそうでした。そんな姿を目の当たりにすると、「ここで特別なことが得られるのではないか」と期待していた自分が恥ずかしく思えました。毎月1回この施設に集まって仲間たちとヨガをすることや、できる範囲で一生懸命身体を動かすこと、休憩中にお茶を飲みながらほっとすること、ヨガの後におやつを食べながら笑い合うこと……そんなひとときが温かさと柔らかさで満たされていると感じられたのです。付き添いの親御さんたちも一緒にヨガのポーズをとりながら、参加しているお子さんの様子を見られることに満足そうでした。

 

幸いなことに私は五体満足で生まれ、毎日を健康に過ごしています。好きな場所に行くことも好きなヨガを続けることもできています。それだけで十分なのです。このヨガ教室で私が学んだことは、「障害者を対象にしたヨガレッスンの内容」でははく、自分がいかに恵まれていて幸せであるかという気づきでした。

 

幸せとは、人と比較して決まるものではなく、自分が決めるものです。ないものを数えて落ち込んだり、悲しんだり、羨んだりする必要はありません。あるものを数えていくと、多くのものを持っていることに改めて気づきます。2013年も残りわずかになりました。一年間いろいろなことがあったかと思いますが、今こうして元気に生きていること、ヨガができていること、大切な人たちに囲まれていることに目を向けてみてください。当たり前だと思っているところにこそ、本当の幸せが広がっていることでしょう。

 

※この記事は、リラヨガインスティテュートHPの「今月の小話」にも掲載されています。

http://www.lilayoga.jp/instructor/kobanashi201312.htm#na12

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